ペルシャ絨毯協同組合 Persian Carpet Association in Japan

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連載コラム/Column:素晴らしきペルシャ絨毯の世界

第2回:イランのお正月「ノールーズ」
イランのお正月は日本の春分の日と同じ日

 今回は、ペルシャ絨毯の母なる祖国・イランの国民的な行事をご紹介しましょう。それは「ノールーズ(nowruz)」といわれるイランのお正月です。ペルシャ語で、ノー(now)は「新しい」、ルーズ(ruz)は「日」を意味します。この「ノールーズ」は毎年、日本の春分の日と同じ日に設定されます。寒い冬を耐え忍んだ植物が新芽や花を開き、人間の心も体も軽やかになるこの季節こそ、新しい年の始まりにふさわしいという伝統的な発想に由来し、天文学上の正確な春の始まりの日がお正月とされるので、日本の春分の日と毎年必ず同じ日になり、昼と夜の時間の長さが同じということになります。分や秒単位まで正確に計算され、太陽が春分点を通過した瞬間に年が明けるのです。


3,000年以上も昔から行われてきた伝統行事

 「ノールーズ」の歴史は少なくとも3,000年前までに遡ります。イランの文化遺産である王書『シャーナメ』(約1,000年前にフェルドースィによって書かれた詩集)によると、イランの伝説的な王様・ジャムシードが冠をかぶった時に太陽の光がその冠を照らし、それを見た人々がお祝いをしたという伝説が残っています。紀元前538年にはキュロス第二王によって国の祭日、国民的行事に決定し、ペルセポリスの遺跡の壁にもその様子が刻まれています。それから何千年経た今も、「ノールーズ」はイラン人にとって最も大きな祝賀のお祭りなのです。


Sを頭文字に持つ7つの植物を飾る慣習

「ハフトスィン(Haft Sin)」という飾り物  「ノールーズ」を迎えるために、家庭の主婦たちは新しい洋服や靴を揃えたり、お客様のために甘いお菓子を作ったり、数週間も前から準備をします。そして、忘れてはいけないのが、「ハフトスィン(Haft Sin)」という飾り物です。各家庭では、頭文字がSで始まる物を七つ飾るのです。イラン人にとって“7”は神聖な数字です。Sを頭文字に持つ7つの物は、植物でなくてはいけません。7つの植物とそれぞれが象徴する意味は以下の通りです。(1)Sieb(りんご) 美しさ (2)Sabze(緑色の草) 再生 (3)Samanoo(モルト、小麦から作られたお菓子) 豊かさ (4)Senjed(グミ) 愛 (5)Seer(にんにく)清潔さ、健康 (6)Serke (酢)喜び (7)Sonbol(ヒヤシンス)春。また、植物とは別に、コーラン、鏡、コイン、金魚ばち、ろうそくなども飾られますが、各家庭によって飾られるものが若干変わってくるようです。
 行く年の最後の水曜日には、庭や空き地で焚き火をして、その火の上を飛び越える「チャハールシャンベ・スーリー」という習慣もあります。こうすることで健康を祈願し、悲しみや心配ごとが取り除かれるという言い伝えがあるのです。


日本とよく似たお正月の風習。そしてお花見も?

 元旦になったら親戚や友人の家を訪問し、抱き合ってキスをして新年の挨拶するのが慣習です。また、子供にエイディーという名のお年玉をあげたり、この日のために用意しておいた新しい服を着るなど、なぜか日本の風習とよく似ているところがあります。
 13日間に渡った「ノールーズ」が終わった後、イランでは「スィズダ・ベダール(Sizdah behdar)」という日本の花見によく似た行事が、正月からちょうど13日目に行われます。“13”は悪い数字で、それを乗り越えるため、そして悪魔を家から追い出すために緑豊かな川沿いへピクニックに行き、祝宴を開くのです。その時、正月の間に育った麦の芽(サブゼ)の葉を結びながら、自分の願いが叶うように祈ります。
 この「ノールーズ」は現在、イラン国内だけではなく、中東、中央アジア・コーカサース地方、黒海周辺、バルカン半島といった広い地域をはじめとする世界各地で、合計3億人以上の人々がこの日を祝っているとさていますので、国際的なイベントといっても過言ではないでしょう。
 2010年の「ノールーズ」は、3月21日です。


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